パンプスとスニーカー

 好き…と言葉に出した瞬間、胸の奥にわっと叫びだしたいような、貧血症状にも似た目眩のようなものに襲われて、ひまりはクラリと足元がフらついてしまいそうになった。




 「ひま」




 わずかに震えているような声音が、頭の上から聞こえて、ますます胸の動悸が早まるのを堪えられない。


 顔だけじゃなく、体ごと振り向いてしまいそうな大きな背中を、掴んだシャツでグッと抑えその行動を阻止する。


 …顔、見られたくない。


 きっと茹で蛸みたいに真っ赤になって、変な顔をしているに違いないから。




 「えっとね!で、でも、そ…その、それが、武尊の言ってくれた、好き…と、お、同じかどうかは…、まだ…」




 …もう、何を言っているのか、自分でもわけがわからない。


 誰かを好きになったことがないわけじゃない。


 けれど、それはあくまでもひまりの独りよがりな憧れだけで、その相手と付き合ったり、それで相手にどうして欲しいとかまで望んだことがなかったことに、今更ながらに気がつかされる。


 …ひ~、ど、どうしたらいいの?


 第一、武尊に言われた‘好き’にしても、たしかに友情の好きとは違うものではあるだろうけれど、それで彼女と付き合いたいとか、そこまで言われたわけではなかったから、何をして武尊と同じ気持ちだと言っていいのかさえわからない。


 …あたし、やっぱり…武尊と付き合いたいの?




 「俺は、ひまと付き合いたい」