パンプスとスニーカー

 武尊から資金を借りる。


 おそらく、それが今の段階でのベストなのだろう。


 親しき仲にも一線はあって、金銭の貸し借りはその一線を超えてしまうという彼女の主義から一時的に目を瞑ることになってしまうにしても、実際にここを出てしまえば困ることは目に見えてるし、本当に実家を頼ることしか手段がなくなってしまう。


 だが、それはひまり側の事情で、自分のつまらない意地や見栄の為に武尊に迷惑を掛けることなどできるはずもない。


 …これ以上、武尊に迷惑かけるなんて。




 「て、ことで、とりあえずさっき連絡して、壮太のところに数日泊まらせてもらうことにしたから、週末にでもある程度荷物を実家に運び込むつもり。と、いっても大学での資料とかくらいだから、いざとなればあっち用のスペアに新たに買い揃えてもいいんだけどね」

 「………武尊」

 「さ、とりあえず話はここまでにして、飯にしちゃおうよ?せっかくひまが作ってくれたハンバーグが冷えたら、もったいないだろ?」




 背を向けた武尊のシャツの裾を咄嗟に掴んでしまったのは…衝動だった。




 「ひま?」

 「武尊、あのね」

 「………」




 ゴクリと唾を飲み込み、緊張に乾く喉を潤す。




 「あたし…このままで、ここにお世話になってたらダメ…かな?」