パンプスとスニーカー

 ブンブン。




 「なに、どうしたの?」




 いきなり頭を振り出すひまりの突飛な行動に、面食らった武尊がキョトンと首を傾げている。




 「ははは…いや、ちょっと」

 「ふぅん?」

 「今、ご飯テーブルに出すね…て……」




 背後、カウンターを振り返って、その向こう側のソファの上、そこに置かれている大ぶりのバッグに気がついた。


 …あれ?




 「うん、俺が皿運ぶから、ひまはどんどんよそって?」

 「…………」

 「?」




 視線を背後に固定したまま、返事を返さないひまりの視線を追って、武尊も彼女が何を見ているのか気がついたらしい。




 「あれって」

 「ああ…うん」




 武尊もメンズバックくらいは持つ時もあるが、概ね多くの男性諸氏と同じく、必要なものはスラックスやジャケットのポケットに入れるくらいで、基本手荷物を持つことすら珍しい。


 それなのに…。




 「どこか…出かけるの?」

 「…あ、えっとさ。ちょっと、数日、壮太んとこ泊まろうかと思って」

 「え?」




 呆然と武尊の顔を見上げた。


 困った顔の武尊は、それでもあまり雰囲気を重くしたくないのか、おどけたように小さく笑って、立ち尽くしてしまったひまりの代わりに、調理道具を手に取り皿に料理を盛り付け出す。




 「どうし…て?」

 「俺はさ…もちろん、ひまの同意なくひまになんかしたり…無理強いするつもりなんてないけど」

 「…っ」

 「やっぱ、告白してきた男と同居とか気まずいんだろ?…ハァ、だから、告白とか…まだ今はするつもりじゃなかったんだけど…しょうがないね。うちのばあさんもひまのこと力になってやれって言ってるし、しばらく実家に帰ろうかなって…さ」