パンプスとスニーカー

 「!」




 ちょうど赤信号で停車した間を捉え、ハンドルに伸し掛るようにして腕を乗せ横を向いた武尊が、ニッコリと笑う。




 「ひまも俺のこと嫌いじゃないよね?…俺を好きにさせてみせるよ」




*****




 …ど、どうしよう。


 渋滞もなく、スムーズに車は武尊のマンションに辿り着き、あっという間に夕食時。


 一応はいつものごとく、夕食の支度に取り掛かったものの、自分を好きだと言っている男とこのまま暮らし続けることなどできるはずもない。


 かと言って…、


 …ムラちゃんのところに泊めてもらう?


 まだ時間的にもそう非常識な時間帯ではなかったけれど、かといって今ここで逃げ出すように出て行くということは、武尊に対してあまりに失礼であからさまなことではないだろうか。


 当初の約束もあったし、恩もある。


 しかし、だからと言って…等々、手を動かしながらも、ひまりの頭はまるであさっての方向を向いていた。




 「へぇ?すげぇいい匂い。今日って夕食なに?」