パンプスとスニーカー

 ズバリと聞けないのが我ながら情けない。


 それでも小さく息を飲んだひまりがわずかに彼から視線を反らし、ポツリと落とした声音が思わぬ程に寂しそうなのに、ドキドキと小さくはない期待を抱いてしまった。


 もしかしたら…と、これまでも思わなかったわけではない。


 …俺のこと、嫌ってはいないよな。


 最初の頃はかなり苦手意識がモロに出ていて、間違っても彼女が自分を好きなのではないかなどと自惚れられるような態度でも雰囲気でもなかった。


 だからこそ、彼女に自分の恋人役などという役柄を頼むことができたわけだから皮肉なものだが、今となっては自分の思いつきと浅はかさと紙一重の行動力を褒め称えたいくらいだ。


 逃げ出したげなひまりの手をいささか強引に掴んで、人目のない場所へと向かった。


 さすがにいくら沸騰した頭でも、公衆の面前でドラマよろしく告白するほどトチ狂ってはいなかったらしい。


 とはいえ、その時はとにかくどうやってこの目の前の堅物そのものの女を口説くかで頭がいっぱいだったので、話の流れによってはスーパーのド真ん中で愛を叫ぶという一生の不覚を犯してたとしてもありえない話ではなかった。


 …よ、よかった俺。 


 ていうか、助かった。




 「えっと…そのね、あたし…あたしさ」




 いつもとは違う二人の空気に戸惑って、咄嗟に彼女が話を変えようとしているのに武尊も気がついた。


 …まずい。


 たぶん、そのまま彼女の‘逃げ’に付き合えば、今までどおりにただの女友達、恋人未満の曖昧の関係を維持することもできただろう。


 けれど。


 …俺は、ひまが欲しい。