パンプスとスニーカー

 遡ること数時間前―――。




 「ひまりちゃん、恵梨香ちゃんにねじ込まれてたぜ」




 冗談じゃない。


 壮太にそれを聞いて、武尊が真っ先に思ったことだ。




 「は?なんだよ、それ。で?」




 気色ばむ武尊をよそに、壮太の方は携帯のメールをチェックするのに忙しく、話半分、一応は話題に出したくらいのお気楽さ。




 「で…って、それだけ」

 「それだけぇっ!?」




 携帯から目だけ上げ、チラッと流した視線が呆れていた。




 「…お前な、俺にどうしろって言うんだよ?」

 「高崎さんがひまのところに出向くなんて、普通のことじゃねぇだろ」




 一年生の時、ひまりと恵梨香が同じ講義をとっていたことは知っている。


 なにせ、その時、当の武尊も同じ講義をとっていたのだから。


 しかし、やはり武尊同様、単なる顔見知り、あとは精々ノートを借りる時に声を掛ける程度の関係だったはずだ。


 ひまりは武尊と違い、自分の利益に繋がらずとも、頼まれれば出来る範囲で応じる人間だ。


 時に、それで武尊や恵梨香のような、ちゃっかりした人間に利用されることもあったが、意志薄弱というわけではなく、できることと無理なことはキッチリと切り分けている。


 …あれでけっこうズバッと断ったりもするもんな。