パンプスとスニーカー

 「え?」




 足元に置いてあった空の買い物籠をさっさと持ち上げ、ひまりの返事も待たずに武尊は出口へと向かってしまった。




 「武尊、あれ、買うんじゃなかったの?」

 「別に急いでないから、今日でなくてもいいよ」

 「でも…」




 せっかくスーパーまで来て、目的のものを目の前にしていながら素通りするなんてと、ひまりが引き止めようと、背の高い武尊の袖口に手を伸ばす。


 しかし、その腕に触れる直前、気がついた武尊に手を取られた。




 「ちょっ、た、武尊」




 手繋ぎされてしまって、びっくり眼に武尊を見返す。


 慌ててもぎ離そうとしても、大きな手にガッチリと掴まれた手はビクとも動かない。


 痛くはない強さだというのに、その手は力強く、押しても引いても振り払えなかった。

 通りすがりざま武尊が買い物籠をワゴンに投げいれ、彼女の手を握ったまま駐車所への道をズンズンと歩いて行く。




 「武尊ったら!」




 犬が踏ん張るようにして、ひまりが武尊の手を両手で強く掴んで引き止める。


 人目も切れ、二人の他に誰も人影はない。


 それで、武尊も納得したのか、再び肩を大きく息を吐き振り向いた。




 「ひま、俺に何か言いたいことあるんだろ?」