パンプスとスニーカー

 「んん?なによぉ、煩いわねぇ」

 「…煩いって、人のベッドで大の字になってよく言うよ」

 「ふわわわわわ」




 大あくび一つして、姉が起き上がる。


 長い黒髪はボウボウ四方八方に跳ね上がって、化粧はすっかりはげ落ち、寝ぼけ眼の顔はとても人に見せられたものではなかった。




 「そんなんだから、恋人と長続きしねぇんじゃねぇの?」

 「なんか、言った?」

 「言ってねぇよ」

 「ていうか、なんであんた私と一緒に寝てるわけ?まさか、その年でお姉ちゃんと一緒に寝たかったとかいうんじゃないでしょうね?」




 胡乱な目で見られて、口をへの字に曲げる。




 「しょうがねぇだろ。完全に一姉が潰れて、とてもじゃねぇけど、上まで連れてく気力も体力もなかったんだよっ」

 「なによぉ、情けないわねぇ。お姫様抱っこで連れていきなさいよ」

 「無茶言うな」




 それでもいつもだったら、姉を自分のベッドに寝かせて、自分は上の階の適当な客間の一つで寝るのだが、今回はそうもいかなかったのだ。




 「ああ、そっか。ひまりちゃん、泊めたんだっけ?」

 「ああ、一姉がゴリ押ししたんだろ?」




 一佳にジッと顔を見られて、ついその顔から視線を反らす。


 特に何を言われたわけでもなかったけれど、その見透かすような目に居た堪れない。


 三つ子の魂百までも…というが、昔から武尊が姉たちや祖母に勝てた試しがなかった。




 「…あのさ」