パンプスとスニーカー

 「なにが?」




 なにやら感嘆したようにマジマジとドアロックを見ているひまりに首を傾げる。



 
 「あたし、指紋認証とか初めて見た」

 「そう?なんか、今日はずっと武藤さん、初めてづくしじゃない?」

 「ああ!本当だぁ。あはははは」




 …なんか、人格変わってる?


 暗い、と思っていたわけではなかったけれど、目をキラキラさせてキャラキャラ笑いながら周囲を見回す顔は、元々の童顔に見合って武尊と同い年にはとても見えなかった。




 「それより、遠慮しないで中入って」

 「あ、うん。お邪魔します」




 酔っ払っていても、靴を後ろ向きにちゃんと揃えて入ってくる。


 それこそ、祖母たちではないが、こういうところに育ちの良さが出ているのだろう。




 「ふわぁ、部屋の中でまた二階建てになってるんだぁ」

 「そ」




 姉たちのいうとおり、たしかに玄関が一つというだけで、しようと思えば上と下で住み分けることは可能だった。


 だが―――、


 …いくら恋人役をしてもらってるからって、俺が他人と暮らす?


 しかも武尊はともかく、この目の前の…そういう意味では堅物そうな女が承知するとはとても思えない。


 今日のところは一佳の押しの強さに負けたのと、その姉が同行しているということ、そしてアルコールによって理性が緩められたことで、こうして武尊の部屋にまでついてきてしまったのだろうけれど。