パンプスとスニーカー

 「…ごめん、今日のところは調子合わせて?」

 「本当に困るッ!」




 ムッと唇を尖らせて、膨れた顔に小さく吹き出してしまいそうだ。


 が、一佳が顔をこちらへと向ける気配に、なに食わぬ顔に戻す。




 「詳しいことは後で…」

 「じゃあ、タクシー2台呼んだから、私たちもそろそろ移動しましょうか。武尊、あんたも車は置いていきなさいよ」

 「そうだな」




 祖母と姉に頷きかけ、ひまりの背に手をあて外へと促す。




 「じゃあ、ひまりさん、これからもよろしくしてちょうだいね」

 「は、…はい、こちらこそ」




 戸惑いつつも、祖母の愛想のよい声掛けに、ひまりも丁寧に応対している。




 「ひまりさん、今度、もう一人のこの子の姉…一佳の妹にも紹介するわね。いずれ父親や兄にも」

 「…はい、よろしくお願いします。あの今日は本当に御馳走様でした」




 ぴょこんと北条家の一同へと最敬礼したひまりに、祖母が鷹揚に頷き返して微笑んだ。




 「どういたしまして、とても楽しかったわ。また、一緒してくださるわね?」

 「あ……は、はい」




 一瞬躊躇したようだったが、それでも素直に頷いてくれる。


 ここまで付き合ってくれるひまりは、ある意味、武尊が見込んだ甲斐のある人物だった。


 …君で正解だったよ。




 「あ、タクシーきたね。じゃあ、行こう」

 「はい」

 「そうね」

 「ええ」




 武尊が柔らかくひまりの背を押し、一同を促し踵を返した。




 「ああ、ひまりさん、武尊。では、さっそく明日、ランチを一緒しましょうね」

 「「えっ!?」」