パンプスとスニーカー

 「…愛」




 複雑な顔で真っ赤になりながらも、それでも一応はあえて否定することなく、ひまりも武尊に同調してくれる。


 …悪い、武藤さん。


 さすがに申し訳ない。


 が、




 「違う、違う。まさか、常識人の私たちが、ひまりちゃんを武尊の毒牙にかけよう、とかそういうこと言うわけないじゃないのよ?」

 「毒牙…」

 「…毒牙」




 異口同音、武尊とひまりが同じ言葉を呟いたが、互いの心情が全く違うのは顔を見なくても声音だけで十分わかった。




 「生前贈与で、おばあさまに譲っていただいたあんたのマンション、なにげにファミリータイプのメゾネットだから、玄関こそ同じだけどなまじの部屋より広いし、二世帯住宅とそう変わりないじゃない」

 「…変わりないじゃない、とか言われても」

 「各部屋にも鍵が付いてるし、上と下で住み分ければトイレとか浴室だって両方でついてるんだから、別々の部屋で暮らしてると思えば全然平気よ」

 「え?トイレとか浴室、二つあるんですか?」