パンプスとスニーカー

 「……まあ」




 一佳の懸念はもっともなことで、ただでさえ法学生は普通の大学生よりはるかに勉強量…特に自習を必要としている。


 その上、特待生で司法試験の現役合格を待望されている優秀なひまりのことだ。


 表には出していなくても、普段から並ならぬ努力をしていることは武尊にも容易に推察できた。


 …いつもすげぇ集中力でしゃかりきに講義受けて、ノートとりまくってたもんな。欠席してるのも見たことない気がするし。


 いくら興味がない相手だったとは言え、武尊にもそれくらいの記憶はあった。


 というか、ひまりの印象がそれしか残っていなかったというべきかもしれない。


 …努力家なんだよな。


 オシャレをしたり、恋を楽しんだり、なんだかんだ言っても他の同級生は青春を謳歌しているのに、夢を叶えるためにと、それだけを目標に頑張っているひまりがひどく眩しい気がした。


 自分とはまるで真逆の存在。


 医者になるのが嫌だから、せめて親や兄弟に自由をもらえる将来を選んだ。


 そこに夢などはまったくなく、ただ適当に、落ちこぼれない程度にやってきた。


 もちろん大学には、ひまりのように夢や野心に燃えて努力する学生も他にもいないわけではなかったけれど、これまで武尊は、そんな泥臭い連中を羨ましいなどと欠片とも思ったことがない。


 けれど自分と同い年の、…まるで少女のような子供じみた外見の女の子の骨太な生き方に目を見張らされる。


 つまらない毎日を、ただ怠惰に過ごしているだけの自分が恥ずかしい…なんて、そんなはずもないのに。


 …俺はそんなキャラじゃない。