そう言うと犬は僕に願った。 「桃太郎さん。桃太郎さん。鬼を倒したその刀で、私の首を落としてください。人の力ではもう、僕の命を奪うことはできないのです」 鬼を倒すほど強くなった犬は、村人に恐れられ、怖がられ、幾多の刃を受けてきたという。 それでも、犬には効かない。 人間の刀では、犬を殺せなかった。 犬は人を愛していた。 だからこそ、もうこれ以上化け物を見るような目で見られたくはなかった。