「てか、それだけだろ?これはたすかったけど、もうもどれば?」
俺がつめたくそう言っても、なかなか帰ろうとしない。
そして、廊下から教室をのぞくと、だれかにむけて不敵な笑みをみせる。
そのとたん、教室からきこえてきた声に、みんながいっせいにしずまりかえる。
「てめー、1年のくせしてよく2年の教室にのこのここれるな。調子にのってんじゃねーよ」
千宙が、この1年女子にキレた。
さすがにそれにおどろいたのか、俺が言っても帰らなかったのに、千宙のそのことばにあわてて帰っていく。
俺も自分の席にもどると、瞬がよってくる。
「ちぃがあんなキレんのめずらしくね?なんかあったのかな?」
「しらね」
でもたしかに、ふだんはあかるくて笑顔が多い千宙。
さっきみたいにキレるのは、ほんとにめずらしい。
でもまぁ、機嫌がわるいときはだれにだってあるだろうと、俺はそんなにきにしなかった。
「てか、斗真いつのまに詩織ちゃんとなかよくなってんの?」
仲がいい……?
あれのどこが。
めんどくさ……。
瞬のそんな声を無視して、俺はまた机に突っ伏した。



