―精霊の祖の恋物語― 後編





「リヒト…君ッ。…ハァッ…ハァッ…。」


リリーは胸を押さえて苦しそうに、

嫌な汗を掻きながら、リヒトの名前を呼ぶ。


「喋るなッ!!」

リヒトは顔を歪ませて言う。


…それでもリリーは口を開く。

「リヒト…君ッ。

 …この世界……嫌な予感がッ…ハァッ…。

 何か…起こるかも…しれませんッ。」


「…何かが起こる?」

リリーの言葉にリヒトは険しい顔をして言う。


精霊の祖である彼女の話だ。

もしかしたら…なんて場合もある。


リヒトはリリーの話を静かに聞く。

「はい。…私が……このような事に…

 なっているのも…その何かが起こる…

 予兆かもッ…ハァハァ……しれません…。

 なかなか…。直らないですね…。」

ハハ……と弱々しい笑みを浮かべるリリー。