それでも直はあたしを離そうとしない。 「イヤだって言ったらどうする?」 「ふざけんな…離せよ。離して!」 あたしは直の腕のなかで激しくもがいた。 だけどもビクともしない。 「離して!」 直の温度に紛れてアイツの記憶が流れてくる。 『いいよ。付き合おっか』 『バレたって平気だよ。未央がいるなら』 『今は先生とか呼ぶなよ』 『あいしてる』 やめてよ。 触らないで。 思い出させないで……。