霊能カウンセラー ミコ 「眠りの部屋」

「もう少し、あと5分だけ!」
キョウコは重い瞼を薄く開いて枕元のミコを見た。
「ダメ、頭が痛いの、起きられない。あと5分だけ・・・お願い寝かせて」
「あなた・・・誰?」
「誰でもいい、良いでしょもう少し?ほんとに――」
キョウコの言葉をさえぎるように、勢い良くミコは手を打った!。
「パシッ!」

「あなたは、もう亡くなっているんですよぉ・・・」
ミコはキョウコへ諭すように優しく囁いた。
「何を云ってるの?」
こういった霊の殆どが、今の自分の状況に気づいていない。だから、先ずはその霊に話しかけてその現実を受け入れさせるのが第一の関門になる。
相手がそれを受けれてくれさえすれば、後は意外と簡単に霊たちは、しかるべき所へ上がって行くのだ。
キョウコは霊になってしまっても、夢うつつな状況からただ単に抜け出せずにいるだけなのだ、あまりに突然、死が起こってしまったの原因だと、ミコは経験上知っていた。
「ねぇ、大丈夫ですから、ちょっと冷静になって目を開いて私をみて下さい」
ミコは意識でキョウコへ話しかけた。
「ちょっと待ってよ・・・わたしは――」
それから、あれこれとミコとキョウコの意識のコンタクトは続いた。
そして、キョウコは自分がある夜眠ったまま、病死した事を理解した。その瞬間から、霊の意識が変わる、そうなれば今まで見えなかったものが、見えてくるのだ。
「さぁ、では行きましょうか?」
キョウコが自分の状況に気づくのを亡くなった日以来ずっと隣で待っていた、向こうの世界の案内役が声を掛けた。
「ミコさんって云いましたっけ?ありがとうございます。あなたのお陰で、ちょっと楽になりました・・」
キョウコの霊は、案内役と一緒にその部屋から姿を消して行った。