透花 side.


コウはあれから、教室に戻ってこなかった。入学式も放り出して何処かに行った様子。

コウの鞄が落ちてたから回収しておいた

放置しちゃダメでしょ…


「透花、それ誰の鞄?」

「…コウの」

「コウってさっきの奴?」


コクリも頷くと、眉間に皺を寄せて難しい顔をする凛


「…どうした、の?」

「…いや…その、コウって奴の事、どっかで聞いたような…」


うーん、と頭をひねってどうにか思い出そうとしている様子


「…思い出したら、教えて」

「うーん、分かった」


コウとはここしばらく会っていなかった

だから、何処にいたのかも、何をしていたのかも私は知らない

何より、雰囲気が昔のコウではない
きっと、何かあったのだ

詮索はしない
今私には、やるべきことがあるから
それにきっと何かあったなら、無理に聞き出さない方がいい

そんなことよりも、先にコウともう一度きちんと話をしなくてはいけない


「凛」

「?、何??」


コウのことを考えるのを止め凛は首を傾げながら私の方を向いた


「今日、寄るところがある」

「それなら、ついてくよ?」


ふるふると首を振る


「いい」

「…うん、分かったー。…じゃあ、私は今日、スーパーにでも寄っていこうかな!」


透花が今日来るし!とテンションをわざとあげるようにニコニコする凛

少し言い方が冷たかったかもしれない
でも、凛がついてきてしまえば意味がない


「…凛、何かあったら…電話」


軽く驚いた凛はすぐににひっと笑った


「もー、透花は心配性だなー!」