「なあ、なあ。 ひとつ上の安達 凛っていう先輩、超可愛くない?」
《安達 凛》その名前が出た瞬間、私は耳を澄ませる。
「ああ! ほんとうにかわいいよな!」
窓側の席の男子たちは5人組。
いつも一緒にいてクラスの中心的存在の男子たちだ。
「けど、彼氏いるんだろ?」
ひとりの男子がそう言う。
自然にずきりと痛む胸。
……苦しい。叶いっこないって知ってるから。
もし、私がどんだけがんばっても無駄。
ナオ先輩は一途に凛先輩だけを想っている。
「ああ、いるな〜。彼氏」
凛先輩の彼氏はナオ先輩。
わかってるから、もうこの話しはやめてほしい。
じゃあ、聞くなよって話だけど
無意識のうちに聞いてしまうんだ。
もう、耳を塞ごうと思ったとき、
「けど、安達 凛先輩って男グセ悪いって有名じゃね?」
耳を疑うような言葉が聞こえた。