「……友達になりましょう、ナオ先輩。 ううん、友達になってください」



「…うん、ありがとう。 乃々ちゃん。 キミは自慢の友達だよ」




ナオ先輩が握手を求めるように手を差し伸べてきたので私はそれに応えるように握手をした。

ナオ先輩の手は少し汗ばんでいるような気がする。 それに気がついたナオ先輩は「ごめん緊張して…」照れたように言った。


私とナオ先輩が手を離すと凛先輩は私に「乃々ちゃんはどうして職員室に?」と問われたので答えようとして私は顔が真っ青になった。


……やばい。 未愛と約束してるのをすっかり忘れてた。


するとタイミングを見計らったように携帯が鳴り響いた。 見なくてもわかる、未愛だ。

きっと、遅い私を心配して電話をしてきたんだろう。 私は慌ててナオ先輩と凛先輩に頭を下げると職員室に入ろうとした先生に地学教室の鍵を押し付けて、電話に出た。



『乃々羽、遅い!』


「ご、ごめん!」


『今どこ!?』


「い、今、ダッシュで向かってるから待ってて」



怒っている未愛から逃げるように電話を切って私は階段をダッシュで駆け下りていった。


その時、私は毎日のように階段を駆け上ってナオ先輩に会いに行っていた時のことを思い出した。



私は前に進めた。 少し強くなれた。



ああ、どうしよう。 無性に藤宮くんに会いたい。