「なに」


「ううん、なんでもないよ…!」



まさか、見とれてましたなんて言えるわけもなく斜め下を向く。



「……文化祭」


「え?」


「一緒に回ろうね」



私は藤宮くんと目が合うとにこりと笑った。



「いつも藤宮くんに助けてもらってばっかだ。ありがとう」



私が情けないせいだ。強くなりたいためにはちゃんと前を向かなきゃ。

先輩の言う通り
……逃げてちゃ、ダメなんだ。



「文化祭、楽しみだね!」



今日の放課後、勇気をもってクラスの子に話しかけて一緒に服を作ろうって言えるようにしよう。


ぱちん! と自分の頬を叩いて上を向く。



「……俺の一方通行、か」



と切なそうに呟く藤宮くんの声は私の耳には届かなかった。