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夏休みはあっという間に過ぎていき、2学期が始まる数日前にユキは松葉杖ありで退院した。
2日前は始業式だけで昨日は午前授業。
そして今日から通常授業ということは病院で会ったあの日以来一度も会っていないナオ先輩と一緒にご飯を食べなければならない。
先輩の胸で泣いたあの後、先輩はなにも言わずに私にハンカチを渡して優しく頭を撫でてくれた。
そして自分が好きな人の前で大泣きしたことがじわりじわりとわかってきて、先輩にすみません!と謝りそのまま逃げるように、ユキの病室まで走って行ったのだ。
そう。私はナオ先輩とは少し気まずいことになっている。
……の、だが?
「もうすぐで文化祭だね」
「は、はい…」
「乃々ちゃんのクラスはなにをするか決まってるの?」
ご飯を食べ終えておしゃべりタイムへと行くのがいつも通り。
そう。いつも通りなのだ!
つまり私が言いたいことは気まずさがひとつもないってことなのだ。
「ちなみに俺のクラスはね〜……」
いつも通り、私に話しかけてくれる先輩に嬉しく思う。
きっと気になるはずの私と先生との関係もひとつも聞いてこないというところは先輩の優しいところだ。