バックヤードからひょいと首を出した男。
私はこの瞬間、身体中の何かが動き出すのを感じた。
知ってる。この感じ。知ってる。この人。
「あ…あの。前シクラメンってお店に居ませんでしたか?」
「え、蒼空、菖蒲ちゃんの知り合い?」
「え、いや覚えてない。誰と来た?」
「そうですか。高校の友達と。」
私はこの人を知っている。
一年前、久々に会った高校時代の友人と朝まで飲んでたあの春の日。
知り合いの店だと友人に引き込まれたあの店。
私は初めて会ったとき、電気が走った。
ああ、私恋に落ちるのかなこの人とってちょっとおもったりした。いいなあって思った。
その日は何気なく飲んで何気なく帰った。まあまたそのうち会えるような気がしたから。
その人が今、目の前にいる。
ああ、これは神様の巡り合わせですか?私恋に落ちてもいいですか?
「ごめん、やっぱ思い出せない。」
「いーですよ!大丈夫です!」
「まあ二人とも座って座って!!」
