「そんな驚くと思わなくて…。ごめんね。」


「こ、こちらこそ、すいません…。」


聞こえたかわからない。
それほど、小さな声だった。


「名前は?見てくるよ。」


彼はなんとも爽やかな笑顔を向けた。
今にも、しゃららら〜ん
という音が聞こえてくる。


「ねぇ…。大丈夫?」


不思議そうに顔を覗き込まれて、私は我に返った。


「ぁ…!有山すぎくです!」


「有山すぎくね…。」


私の名前を復唱し、彼は人の渦の中へ入っていった。


しばらくして、彼が戻ってきた。


「1-Aだって。俺とも同じクラスだったよ。せっかくだから、一緒に教室まで行かない?」


戻ってきた彼は、また輝く笑顔を見せてくれた。
だけでなく、教室まで誘ってくれた!


「う、うん!」


(私、もう恋したのかな…w)

元気に返事した自分が恥ずかしかった。


「じゃあ行こ。俺、鈴木健人。よろしくね、有山さん。」


「こちらこそよろしくね、鈴木君。」


そして、5分もない教室までの道のりを、私と彼は共にした。