「ごめんね、姫乃。」
少し笑うお母さん。と呼びたくもない。
「お父さん。いつも命日は来てくれたのに。まさか忘れてたの?」
「…。」
図星。はっ。ふざけないでよ。
なんなの。何のために帰ってきたの?
「なんだ図星…。忘れるほどの存在なんだね。お父さんの中でお母さんは…。」
「ちょっと、姫乃。その言い方はなんなの?」
お母さんは怒ってる。
お姉ちゃんは興味のなさそう。
「は?わたしあなたに何も言ってないんですけど。」
「おい、姫乃。お母さんに向かって…「お母さん?笑わせないで!」
お父さんの間を入って言う。
「おい。いい加減にしろ。」
「なに?いい加減にしなきゃいけないのはお父さんでしょ。何様のつもり?言っとくけど
お父さんも"お母さん"もわたしのお母さんだけが悪いと思ってんでしょ?」
「…。」
何も言わないお母さん。
「そんなわけじゃ…。」
否定しようとするお父さん。
「お母さんが愛人だから?お母さんはそんなに悪いの?お父さんだってお母さん好きだったんでしょ?ならお父さんだって悪いのに。お母さんばっかり悪くしないで!!だいたい、浮気される方にも問題があるでしょ?笑
なによ。皆して。お母さんだけが悪いみたいな言い方。」
「姫乃…。お母さんの事は仕方ないんだ。」
「なに…が仕方ないよ!!!」
怒鳴るのも仕方ない。
「命日じゃない日に行けばいいだろ?」
「お父さんは何考えてるの?命日だからこそ行かなきゃ行けないでしょ?本当何考えてるかなんか知りたくもないけど、お母さんはどうなるの?お母さんの事を見捨てるの?お父さんってそんな人なんだね。本当、皆いなくなればいい!!!」
バンっと机を叩いて行き良いよく椅子を引いた。
ずっと黙ってたお姉ちゃんが喋りだした。
「姫乃。言っとくけど、あんたのお母さんは愛人なのよ?浮気されたのはうちのお母さん。それはあんたも分かってんでしょ?」
「わかってるよ!それでも…。命日くらい来てくれてもいいじゃない。」
「今はうちの家庭があんのよ!あんたはお母さんいないから分かんないかもしれないけど!
今のお母さんの気持ち。愛人のあんたがこの家にいるのがこっちからしたら迷惑なのよっ!」
お姉ちゃんが言ってることは正しい。
私が家にいるのは迷惑なんだ。
そんな事くらい痛いくらい知ってる。
「知ってる。」
「愛人の子のあんたが説教できる立場?」
「…。」
お姉ちゃんはお母さんを守りたいのだろう。
でもね、お姉ちゃん。
わたしもお姉ちゃんがお母さんを守るように
わたしもお母さんを守らなきゃいけないの。
「説教なんてしてない。わたしが居るのが邪魔なんでしょ?おばさんだって。」
「……。」
おばさんは黙ったまま。
「あんたのその髪の色。目の色。全部、全部、お母さんを傷つけてるの!そのくらいもわからないの?愛人の子供を預かってるお母さんの気持ちは無視?ふざけないで。」
「わたしの事ならどれだけけなしてもいい。でも、お母さんの事だけは言わないで。お母さんはとてもいい人なの!」
「そうよ!あんたがそうやってお母さんをけなされるの嫌でしょ?それと同じでわたしもお母さんをけなされるの嫌なの!」
お姉ちゃんは泣いてる。
泣きたいのはわたし。
でも、泣いたら私の負け。
「そうだね。おばさんごめんなさい。私がお母さんに似てて。お母さんが愛人で。
でも、わたしはそれでもわたしのお母さんだから。これ以上お母さんの事悪く言ったら誰であっても許さない。」
それだけを言い、誰も反応はしない。
部屋に戻った。

