「よ。」
朝から話しかけてくれるとは思わなかった。
「おはよう。」
「なに。お前もなんか聞いてんの?」
私のイヤホンを取り、自分の耳にはめようとする。
「え…。」
そうだった。わたしは今椎名の曲聞いてるんだった。
「あ、えっと…。ただ!曲が…好きなだけ。」
「ふっ。そんなの知ってる。お前が聞くなんて意外。」
「そう?私にだって趣味くらい…ある。」
「なら。俺らの歌の何が好きなの?」
「何って…。全部。」
「なにその、ありったけの答え。」
「だって…声も歌詞もリズムも全部が好き。」
「ふーん。」
「……。」
「まぁ、また聞きに来てよ。」
「え?来てもいいの?」
「は?なに。来ないつもりだったのかよ。」
「いや、椎名嫌かと思って。」
「別に?俺おまえのこと嫌いじゃないよ。」
そうニコッと笑う。
「は…?」
「なーんて。冗談。笑 でも、また来いよ。待ってるから。」
そんな笑顔しないでよ。
わたしだって期待しちゃうよ…?
それだけ椎名に夢中だった。
でも、こんな事を言ってられるのも今のうちだけだったなんて。

