その言葉を聞いて、峯岸さんは私の手をさらに強く握る。少し痛い。
「何で?俺が最初に目をつけたんだよ」
そういった峯岸さんの表情は、どこか楽しそうに見えた。
「とにかく藍里ちゃんはダメ。他をあたって。」
「へぇ、顔見知りだったんだね?」
「へ?あっ、まぁ……」
な、何この空気…
だんだん重くなってきてるんですけど。
「えーと…とりあえず侑李くんも来て全員揃ったわけだし、自己紹介でも…」
猫田さんがその場の空気を締めようとしたけれど
次の侑李の行動でそれも無意味になった。
「俺ら抜けるんで!」
と、一言いい放って
侑李があたしの腕を掴んだんだ。
その反動で峯岸さんに掴まれていた手が離れた。
近くにあったあたしの荷物を持って、お代だけテーブルに置いた。
あ、そこはちゃんと払うのね。
意外と律儀…じゃなくて!
「あっ、ちょっと侑李!」
「ごめん峯岸。あとよろしく」
「はぁ?ちょ……」
ちらりとも振り返らず峯岸にそう告げると
そのまま入ってきたばかりの部屋を出た。
