「ごめん、かなり寝過してた……って」
「……あ」
入ってきたその人と目が合う。
茶色い猫っ毛
スラッとした長身
ちょっと鼻にかかった甘い声
この世のものとは思えない容姿の彼は
「お、やっときた。侑李」
とんでもないイケメン、っていうのは
多分確実に、この人じゃなくて
今入ってきたあいつのことだったらしい。
猫田さん達がマイクを持ったまま彼を凝視する。
瑠花でさえも口をぽかんとあけたまま固まっている。
そりゃあね、その辺で見ないレベルのビジュアルだとは思うけれど
多分この沈黙はそうじゃない。
彼らの放つなんとも言えない空気がそうしてるんだ。
なんとも重々しい空気の中、口を開いたのはまたしても峯岸さんだった。
「……藍里ちゃん?どうしたの?」
「えっ…あ」
見つめ合ったまま動かないあたし達に話しかけてきた。
峯岸さんとあたしの手はつながったままだった。
それを黙ってじーっと見ている侑李。
今までに見たことないくらい眉間にシワを寄せている。
「……峯岸」
「ん?なに?」
「その子はダメだ。」
