君といれる奇跡

だからーー!いつも言ってるでしょ?早めに終わらせとけば後が楽って!」

携帯を耳に当て時計と手帳を交互に見つめながら真夏の暑い日差しを浴びながら歩いていた。

「明日には締め切りだよ?とにかく今日の夜までには必ず企画書完成させて!」

電話を切り、ふぅっとため息をつく

私が目を覚ました日、ちょうどその場にいた海が私を見て涙を流して抱きしめてきた。何がどうなってるのかわからない私は固まってしまった。
ふと横を見ると陽は眠ったままだった
海からあの事件の全てを聞き、つい引っ叩いてしまった。でも…
『自首なんてしなくていいから、陽の為にも罪滅ぼしとして生きて今この時間を大切にして!』と大きな声で叫んだこといまでも覚えてる
自首して警察行くなんてそんなの望んでいないから、陽も私も。

あれから一生懸命勉強して大学に行きデザイナーの編集長として忙しい日々を過ごしている。時間が空いた時には陽の見舞いにもいってその日あった出来事を話していた。私が目を覚まして半年以上経っている。未だに陽は目を覚まさない

「…天」

深くは覚えていないけどなぜかこの文字が目覚めてからずっと離れなかった。顔も曖昧で、夢のような物を見ていた気もした。だけど思い出せない。きっと大切ななにかだと思う。

やっと仕事が終わって夜6時頃
急いで病院に向かい、陽に話しかけていた。


「陽!きいてよ!本当!最近きた新人さんがどうしようもなくて…」

『天!』

またこの感じ
一体貴方は誰なの?

「ねぇ、陽。最近同じ夢をよく見るの。なんだか不思議で、でもとても暖かい夢
なんなんだろうなー。陽はなにか夢を見てるの?」

もちろん帰ってくるわけもなくピクリともせず眠っていた。

「ごめんね。私がさきに目を覚ましちゃって。出来れば一緒にが良かったな」

『天と一緒にいたい!』

まただ。なんだろほんとに
思い出せない自分に腹が立った
頭痛が私を襲った

「いっ…た」

なぜか次々に蘇った
そして

「天…」
涙を流した
あー全て思い出したよ。天

「天。遅くなっちゃったかな?やっと思い出せたよ。約束守れたかな?」

陽の手を握り少し力を強めた
かすかに陽の手が動いた気がした

「え?よ、よう?」

陽のまぶたが少しずつ開いた

「……使、…美月。」

「陽!陽!」

にこやかに陽が微笑んだ

「…ほら、な。思い出せた、だろ?」

「うん!うん!うん!」

「…待たせて、悪かった。」

陽がゆっくり左手を私の頬に添えてきた
私は握り返しながら陽の暖かさに触れた

「本当だよ。まったく、でもおかえり陽!」

「ただいま。美月」

その夜2人で微笑みあった。
ずっと会いたかった。
天でもあり陽でもある貴方に。
もう忘れたりしないからずっと側にいてね。


END