君といれる奇跡

なんで、天も一緒じゃなきゃやだよ。
ワガママかもしれないけど、無理なのはわかってるけどこの世界の記憶がなくなる。天との記憶がなくなる。そしたら二度と会えなくなってしまう

「もし決断が決まったらまた来てくれ。
ワシの判断で2人を困らせてしまい本当に申し訳ない」

2人で館を後にした
2人共無言で歩いていた

「なぁ、覚えてるか。俺たちがあった日のこと」

「うん。ハッキリ覚えてるよ。天、無愛想で怖かったな。でも嫌じゃなかった」

「あぁ、俺も嫌じゃなかった」

「それから2人で仕事たくさんして、少しずつ話すようになって仲良くなって、だから忘れたくない。天のこと忘れたくないよ」

「俺だってお前のこと忘れるのやだ。でも、引き下がれないんだ。覚悟しただろ?お前には生きる権利がある。戻りたいと思う意志が強いのが何よりの証拠だ」

涙で天の顔があまりみえなかった
そして抱きしめられた

「大丈夫だ。俺もいつかそっちに戻る。記憶が消えてもきっと思い出す時がくる気がするんだ。だから待ってろ」

「でも、私も記憶が…」

「俺らなら大丈夫だ。消されてた記憶がまた蘇る事ができたんだから。きっと大丈夫だ」

「ふっ、てん…ふぇっ、てん」

何度もなんども泣きながら天の名前を呼んだ。

そして次の日。館に向かった

「決意はできたのか?」

「はい」

「では、人間界に戻るものをここへ。
この世界に残るものをあちらに」

それぞれが行く道を離れて少し歩いた
初めて2人の道が別れた。

「では、始めるぞ。使よ」

天は私を見つめた。
光に包まれ、徐々に私も自分の体が消えかけて行った
涙が止まらなかった

「天!きっと貴方の事思い出すから!ずっと待ってるから!だから、だから…」

天は微笑んでくれた。優しく誇らかに

「…陽!」

天、いや、陽の優しい笑顔を、あの頃の日々を思い出しながら私は眠りについた。