「いお!」

なんだよ、と言いたげにいおは振り向く。
わたしはその雰囲気に負けじと噛み付くように言う。

「好き!」

「…え」

「聞いて。わたし……いおのこと、これからもいっぱい知りたいって思ったの。
気づいたのは、夏休みくらい…かな。
思い返すと、いおには、たくさん助けてもらったよね、ありがとう」

あー、言っちゃったよ。
そんな後悔と。

「言えて、よかったよ……近々、引っ越すし」

フラれるかもしれない。
それでも、伝えられてよかったなっていう感情が湧き上がる。

最初はそれほどでも、なかったんだけどな。
なんて。ちょっと皮肉めいたことを強がって言ってしまう。

いおのことを見れば、驚いたように目をパチクリさせている。
ーーーフラれる覚悟は、できてるよ。



「大好きだよ、元気でね。さようなら……っ!」


でも、そんなこと思っていても。
返事なんか、聞きたくなくて。
逃げるように、彼の元を去ろうとした。



「おい…っ!」


けれど、やっぱり男と女の差なのか、すぐに手を掴まれてしまう。