直樹さんに相談に行ってから4ヶ月。
簡単に済ませる式と披露宴の準備は、思ったほど簡単には済まなかった。
普通は両家にご挨拶にお伺いするところを、北條路の本家では全ての分家にご挨拶をして廻るのである。
半年あっても足りないのではないかと思ったけれど、
そこは完璧執事の和樹のことだ。
スパスパとさばいて、お式まで2ヶ月を残して終わらせることができた。
これをやっておけば、あとから面倒が起きにくいので、一安心…。
今日は、披露宴の引き出物を選ぶのに、プランナーさんと打ち合わせをしたあと、
街を歩いてデートをした。
和樹と街を歩くお出掛けは久し振りだった。
「何だかデートらしくてこういうの、いいわね。
おばさんとおじさんで、普通に夫婦で買い物に来てる様にしか見えないだろうけれど……」
お付き合いを始めた当初から、和樹は二人で歩くときは必ず手を繋ぐか、自分の腕をとらせる。
今は明るいので手を繋ぐ時間帯なの。
「おじさんとお嬢様でございます。
こんな執事はどこにも見当たらないでしょう。
私はほんとうに幸せ者でございます。
お嬢様、注文していた品が出来上がってございますので、これからご一緒に受け取りに参りましょう」
「あら、結婚指輪が出来上がったの?
楽しみだわね」
お店に着いて、先日二人で選んだものに刻印を入れて貰った指輪を受け取った。
仲良く二つ並んだ丸い輪が、『早く着けてくれ』とピカピカ光って主張している。
「今から着けちゃダメなのよね。
指輪の交換だけ先にしてしまいたくなるわね…ふふ」
「お嬢様、遅くなって申し訳ございません。
今はこちらをしていて下さいませ」
和樹はベルベットの小箱からプラチナ台の立て爪ダイヤモンドの指輪を取り出して、
私の薬指にはめてくれた……。
「まぁ!婚約指輪まで用意してくれていたの?
私、全然気が付かなくってよ?いつの間に……。
嬉しいわ。ありがとう和樹。すごく綺麗…」
「お嬢様の方がお綺麗でございます…。
もうお嬢様は貴金属に欲がないのは存じておりますが、
結婚指輪と婚約指輪には、他のどんな高価な物にも無い、特別な意味がございますゆえ、
お渡ししておきたかったのでございます」
「もう……和樹ったら本当に素敵だわね」
「お嬢様には叶いません」
いいえ、和樹は私にはもったいない素敵な人なのよ。
容姿端麗、頭脳明晰、文武両道のスーパー執事だもの…。