土曜の朝は、いつもならゆっくり起きるのだけれど、
今朝は平日と変わらない時間に目が覚めてしまったので、早い時間にリビングに降りた。


川村さんも寺田さんも土日はお休みなので、居るとしたら……。
やっぱり和樹がコーヒーを飲みながら新聞を読んでいた。


「おはようございます、お嬢様。
早起きでいらっしゃいますね。
土曜はブランチの予定でしたが朝食をお作り致しましょうか?」


「おはよう。
和樹もお休みなのに相変わらず早起きね。
私もコーヒーだけでいいわ。
あ、自分で入れるからいいのよ?座っていて」


「とんでもございません、何をおっしゃいますか。
私がいる時はいつも通りおまかせください」


「そう?じゃあお願いね。
今朝は何だか気分よくスッキリ起きてしまったの。
お休みなのに予定がないわ。
モテないってこういうことよね」


「お嬢様は、いつまでもお綺麗でいらっしゃるので、若い頃も今もずっとおモテになっていらっしゃいますよ?
それとなく振り払うのが大変でございます。
特にゆうべの害虫は、しぶとくて厄介です」


「……そうなの?
害虫って、もしかして西島さんのことかしら?
例えがどんどん酷くなるわね。
和樹は私の知らないところでも私のために働いてくれているのね。ありがとう」


「働いている意識はございませんが…。
まぁ、お嬢様を全面的にお守りするのも仕事でございますね」


「本当にね。私は和樹がいなくなったらきっと生きていけないわね。
ずっと一緒にいてくれなければ困るわ」


「……いなくなることなどございません。
生涯お仕え致しますゆえ、ご安心くださいませ。
コーヒーをどうぞ」