夕方過ぎ。
一旦屋敷に戻ったけれど、やっぱり金曜の夜だし、お出掛けしたい……。

和樹は疲れているかしら?


「和樹、これから一緒にお出掛けしたいと言ったらうんざりしてしまう?」


「おや、朝からそのご予定でございましたでしょう?
お召し物の準備もしてございますよ?」


「でも、今日は理事会もあって気疲れしたし、スケジュールがつまっていて忙しかったじゃない?
疲れていたら出掛けたくないんじゃ…」


「お気遣いには及びません。
お嬢様と夜のお出掛けは、楽しみでもあります」


「そうね。
お食事とお酒のデートみたいよね…」


「はい、毎回、綺麗な女性にデートに誘って頂けて嬉しい限りでございます。
こんな執事はあまり居ないでしょう…光栄に存じます」


「あら、それはどうもありがとう。
和樹も素敵な男性ですもの、私だって毎回楽しくってよ?
でもどうせならもう少し若い女性が良かったでしょう?」


「お嬢様は私より6歳も若くていらっしゃいます」


「それは…そうだけれど」


「今夜もしっかりエスコートさせていただきます。
なるべくお側をお離れになりません様に…。
あそこにはいつも大きな虫が一匹おりますので」


大きな虫とは、マスターの西島さんの事。


「お髭の生えたベーシストの虫かしら…。ひどい言われようだわね」


「西島は昔からお嬢様への態度がなっておりません。
馴れ馴れしすぎますので、くれぐれもお気をつけください」


「大丈夫よ。本当に西島さんと和樹は仲が悪いわね。何故かしら、不思議だわ」


「彼と仲良くなったら、それこそ不思議でございます」


何故か解らないけれど、お互いに天敵同士の様に見える二人なのだ。