君についた10のウソ

「沙耶はさ、苦しくないの?自分ばかりを犠牲にして」


「………」



顔をあげた梓の図星すぎる言葉に黙り込んでしまう。



「優のため優のためって言ってウソついて、優を騙してまで彼女になった城崎桃菜の言うことまで聞いて、なにも思わない?好きなんじゃないの?優のことが」


「……好きだよ」


「じゃあ少しくらいワガママ言いなさいよ。優と一緒にいたいって言いなさいよ。彼氏が自分のことを忘れたからって、その気持ちを少しも見せちゃいけないルールなんて、ない」


「………」


「沙耶、情けないのよ。ウソついて、好きな人のためって言ってる自分がカッコいいとでも思ってる?優しい人だとでも思ってる?そんなわけないじゃない」


「梓ちゃん……っ!!」


「透は黙ってて」



……そんなこと思ってない。


思ったことなんて、一度だってない。



「梓ちゃんはこんなこと言ってるけど気にしなくていいからね!?」



透くんの焦っている声が耳に入る。


あたしは本当に、優のためを思って…


必死に自分の気持ちを押し殺して、苦しみを噛みしめて。


梓はそれも全部、偽善だって言いたいの…?