君についた10のウソ

おばさんたち、どこに行ったんだろう…



優が目覚めたときに12を指していた時計の針は今はもう4を指していて。


あと少しで、昨日の事故から1日経つんだ…


あたしと優を襲った事故。

あたしと優の幸せを奪った事故。


あの悪天候の中、目の前に迫る車がフラッシュバックする。



あたしなんか、守らなくてよかったのに…


おかげで無傷だったよ…



「……ありがとう」



夕日が差し込む病室。


あたしのつぶやきは儚く消えていく。



守らなくてよかったけど、ありがとう。


あたしを守ってくれて、ありがとう。



ふわふわの髪をなでているとパチッと優の目が開いた。



「なにしてんの?」


「あ、いや…これは……」


「てかお前だれ?まじめにわかんねーんだけど」



ズキズキと痛む心が声をあげている。


本当に覚えてないんだ……



「あたしは沙耶。本木沙耶」



無理して笑顔をつくって答える。


ひきつってないかな…大丈夫かな…



「元木沙耶?で?」


「……でって…?」



冷たい声。


そういえば、優って知らない人には冷たかったな……


警戒心が強いというか、なんというか…