君についた10のウソ

「行ってきます」



朝ごはんを食べて身支度を済ませたあと、ローファーを履いて玄関を出る。



「本木?」



そのまま右へ進もうとすると、後ろであたしを呼ぶ声がした。


だれって、そんなの……



「優……」


「はよ。お前の家ってここだったんだな」



へぇー、なんて言いながらあたしの家をまじまじと見る優。


優の家からだと学校へ行くのにあたしの家の前を通らないといけない。


だからこれは優の記憶どうこうじゃなくて、たまたま時間が被っただけ。



だけどね。


優があたしと登校してた時間と同じ時間に家を出たってことだけで、こんなにも嬉しい。


学校まで、ふたりで一緒に行けるんだもん。


こんなことでも気分が良くなるなんて思ってもいなかった。


たった一週間のひとりぼっちの登校だったけど。


ひとりぼっちは寂しかったから。



「優、一緒に行こ」


「そうだな」



優の隣を歩けるだけで、幸せなんだ。



久しぶりの優の制服姿にドキドキして。



特に会話はない。


でもなぜか、心は満足している。