君についた10のウソ

「もうっ、沙耶ちゃんったら良い子なんだから……」


「本当だよ……こんな状況でも自分のことじゃなくて相手のこと考えてるなんて…」



目をウルウルさせながら笑うおばさんにホッとする。


透くんも笑ってくれていて。



「おばさんも、みんな、沙耶ちゃんの味方だからね?辛くなったら言いなよ?」


「はい。……ありがとうございます。それと、こんなことになってすみません」


「いいのよ。優と沙耶ちゃんが笑っていてくれれば、もう他にはなにもいらないわ……」



さ、おにぎり食べましょ、とおばさんが言って三人、それぞれかぶりつく。


噛むたびに、心の奥の感情がこみ上げてくる。



「しょっぱいわねぇ……」



おばさんがポツリとつぶやいた言葉にだれも反応しなかったけど。


気づかないうちに流れだした涙がおにぎりに染み込んで。



おばさんが買ってくれた鮭おにぎりは、


………しょっぱい涙の味がした。



おにぎりを食べ終わったころ、みんなの頬には乾いた涙の跡が残っていて。


それを隠すかのようにみんなで声をだして笑った。



きっとみんなも未来を信じてる。


描いた未来が今になると。

空気の中の笑いが現実になると。

こんなにしょっぱいおにぎりはこれっきりだと。


みんな、みんな………信じてる。