君についた10のウソ

「その女の子が、名前を呼ぶんだよ。『優』って。それが……愛しくて。ただ顔だけがまったく見えない。……光のなかで微笑んでるのは分かるんだけどな」



…顔まで、見せてくれればいいのに。

そうしたら今すぐ元に戻れるかもしれないのに。


神様を少しだけ恨んだ。



そのとき、聞こえてきた。



「………優」



あたしの背中のほうにあるドアが静かに開いて。


まるで“愛している”と言っているように聞こえる声が。



ざわつく気持ちを抑えながら振り向くと、そこには桃菜ちゃんが立っていた。


ポニーテールをして

制服を着て


……微笑みながら。



なんで。どうして。


そんなあたしの心の叫びは声にはならなくて。



「もしかして……城崎が俺の…?」


「…うん、そうだよ。思い出してくれたんだね……っ」



はっきりと頷いて涙を流す桃菜ちゃん。



「ごめんな。今まで忘れてて……」


「う……ううん…思い出してっ……くれただけで、じゅ………じゅぶんだよぉ……っ」



そのまま号泣しながら優のもとへ歩いていって抱きついた。


眉をさげながら謝る優も。

泣きじゃくっている桃菜ちゃんも。


なにが……起きたの…?