君についた10のウソ

「俺にだって、好きな人くらいいるよ」



顔を俯かせながらそう答えた透くんの声には震えていた。


透くんも辛い恋、しているのかな……



「マジで!?教えろよ〜」


「……無理だよ」



空気を読まずにハイテンションで突っ込んでいく優に呆れる。


常に元気で明るい、それが優のいいところなんだけどね。



「なんで無理なの?」


「俺ら誰にも言わねーよ?」


「……ふたりだから、無理なんだよ」



ふたりだからってことは……梓、とか?


あたしたちが仲良いからあまり言いたくないのかな。


少し寂しい雰囲気につつまれる。



「まあこんなこと言っててもどうにもならないし!気にしないでね」



無理して場を明るくしようと笑う透くんに胸が痛む。


優も十分優しいけど。


透くんの彼女になったら、とっても大切にしてもらえるんだろうなぁ…



「なぁ、俺さ、聞きたいことあったんだけど…」



少しの沈黙のあと。


静かに優の声が病室に響いた。