君についた10のウソ

優の病室の前には、さっきまでいた男子たちはもういなかった。



その場にはなにもなくて。


あたしが売店で買ったものってどうしたんだろう。


優に渡してくれたのかな?


それか持ち帰ってくれた、とか?



「はい」



コンコンとノックをすると中から優の返事が返ってきた。



「お邪魔します」


「……本木?お前一人?」


「うん。一人だけ」



梓と透くんは今日はそれぞれ用事があって来れないって、ここに来る前に言われた。


だから今日はあたしひとり。



「あ、これお前かららしいな」



ヒョイッと優の手で軽く持ち上げられたビニール袋。


中にはさっきあたしが買ったもの。



ちゃんと渡ってたんだ。


良かった…



「そうだよ。好きなものばっかりでしょ?」


「好きなものばっかりってか全部好きなものだけど。ありがとな」



嬉しそうに笑う優を見て、あたしも嬉しくなってくる。


優の笑顔があたしに向けられるのはいつぶりだろうか。


あの日、開いてしまった距離が少し縮まった気がした。