君についた10のウソ

「……バカ…むす、こ……?」



ふいにあの声が聞こえて。


なにかに縛られたかのように体が動かなくなる。



「優!!気づいたの!?」


「穂南、先生呼べ!!」


「せ、先生…!!」



穂南さんが出て行ったと同時に体に自由が戻って、一歩一歩ゆっくりと優に近づいていく。


そこには目を開いている優がいた。



「…優……」



名前を呼ぶと優がこちらを向いた。


“大丈夫だったか?”

“心配かけたな”


そんな言葉を期待して優を見つめていた。


けど…



「…お前、だれ?」


「………え?」



優の言葉はあまりにも残酷で。


あたしの心を食いちぎる。



「優?分からない?沙耶ちゃんよ…?」


「沙耶?だれだそれ」



“記憶喪失”


考えたくもない、信じたくもないものが脳裏に浮かぶ。


優…あたしだよ。沙耶だよ…


……忘れちゃったの…?