君についた10のウソ

「本木……?もしかして、今の……っ」



あたしがいたことに気づいて焦っている目の前の人、北山くん。



「またなー」


「おー暇だからまた来いよ」



他のクラスメイトたちもぞろぞろと病室から出てくる。


そして次々とあたしの存在に気づいて足を止める。しまった、という顔をして。



「……なにもっ…なにも聞いてないから。聞いてない……」



…このままここにいたら優に気づかれてしまうかもしれない。



「本木……!!」



“気づかれたらいけない”


その変な使命感にかられたあたしの足は勝手に動いていた。



「ちょ、待てよ!!」



必死に前に前にと進もうとするあたしの耳に後ろから呼び止める声なんて届かない。



行き先があるわけじゃない。


むやみやたらにあたしの前に現れた道を走り続ける。



「廊下を走らないでください!」

あたしを注意する看護師の声も。


「本木!止まれよ!!」

あたしを追いかけてくる北山くんの足音も。



なにもあたしには聞こえない。


耳栓をしているかのように、なにも音が入ってこない。