君についた10のウソ

「……透、よくやったわね」


「なにが?」



笑い続けているあたしに呆気にとられていた梓が嬉しそうに言う。


透くんは意味がわからないみたい。


もちろんあたしもだけど。



「沙耶、笑ってるじゃん。理由がどうであれ、前みたいに笑ってるじゃん」


「あっ…本当だ……」



あたしを見る透くんの目が瞬きをくり返す。



「……ありがとう。透くん」


「いや、俺は別になにも!!」


「そういうときは素直にどういたしましてって言いなさいよね」



バシッと梓に叩かれる透くんは、やっぱりみんなから愛されるいじられキャラで。


心がほんわかと暖かくなる。



「……これからもそうやって笑っていなさいよ」


「沙耶ちゃんは笑ってたほうがその、かわ、かわいっ……イデッ」


「優がいないからって変なこと言うんじゃないわよ」


「………はい」



ねぇ、梓、透くん。


二人がここにいてくれたから。

きっとあたしは笑えたんだよ。



優がいない穴は埋められることはないけど。


その分よりももっといっぱい。

もっともっとたくさんの楽しみを、幸せを作っていけば笑顔も増えて溢れる。


優がいなくても強く生きていけるように。

笑って頑張るよ。