君についた10のウソ

「みんな、片づけ進んでる?」



そんな声とともに表れたのは穂南さん。



「うわーけっこうあるね」


「ストーカーかよって思いましたよ」


「梓ちゃん辛辣!」



あははと室内に笑い声がこだまする。


こだまするけど。


あたしは……笑えない。



「……沙耶ちゃん…」


「ははは……本当にストーカーみたいですね」



優。ごめんね。


ストーカーなんて思ってないよ。


もちろんここにいるみんなも。


ただみんな、あたしに笑って欲しいだけだと思う。


心配そうな目が、そう物語ってる。



優のなかからあたしが消えたあの日から。


……あたしね。笑えないの。笑えてないの。


今までどうやって笑ってたのかな?


おもしろいときに笑ってた?

楽しいときに笑ってた?



……笑うって、なに?



「沙耶ちゃん。無理、しないでよ?」


「大丈夫です。これくらい……」


「そう……」



あたしは平気でウソをつく。


きっとみんな分かっているけど言わないでいてくれている。


それだけで、もういいよ……