君についた10のウソ

「昨日のお昼、優の目が覚めました」



……ここからが本番。


頑張れ、あたし。



「優は意識を取り戻したけど、事故の影響であるものを失いました」


「あるもの……?」



声がしたほうを見ると城崎桃菜ちゃんが強張った顔をしていた。



「優は……あたしを失いました」


「え?……沙耶ちゃん、ちゃんとここにいるじゃん」


「……あたしはここにいるけど、優の中にはいません。……優の記憶から、消えたんです…」


「ウソ……」



桃菜ちゃん。ウソじゃないよ。


ウソだったらどんなに良かったことか……



「優にはあたしが優の彼女であることは言っていません。今の優にとって、あたしはクラスメイトのひとりです」


「言わないの……?」


「……うん。言わないよ」



クラスのあちらこちらからつぶやく声が聞こえる。



「なんでそんな……」

「言わないと大山くんが可哀想だよ」

「……記憶ないって本当なのか?」



みんなそれぞれ思うことがあるだろうけど。



「お願いします。みんなも優に本当のことを言わないでください」