君についた10のウソ

「……本当のことを言えば思い出すかもしれないんだよ?」



透くんは納得できないんだろうな…


拳を握りしめて戸惑っている。焦っている。



透くんの気持ちも分からなくはないよ?


だけどごめん。透くん。



「あたしは優のことを信じてるから」



今すぐにじゃなくたって。

どれだけ時間が過ぎたって。


優は絶対思い出してくれる。


それまであたしはちゃんと待ってる。



「……分かったよ…」


「梓ちゃん!?沙耶ちゃんも本当にそれでいいの!?俺は納得できないよ…!」



息も途切れ途切れになりながら、透くんが訴えてくる。



「沙耶ちゃんは優のことが好きなんでしょ!?」


「……だから、だよ」


「なんで!?好きなら………」


「好きだから、優のことを苦しめたくないの!!」



透くんの言葉をさえぎって叫ぶ。



「あたしだって本当は言いたいよ!?あたしは彼女だよって。あたしは友達なんかじゃないよって。…でも!!それで優を苦しめるくらいなら……あたしは言わない…っ!!」



静まりかえる屋上。

聞こえるのは枯葉のささやき声だけ。