君についた10のウソ

まず、俺の近い距離にいるやつだろう。じゃなきゃ手を握るわけがない。


それにこの手は色が白い。しかも女っぽい手をしている。


その時点で俺に近い女に絞られる。


母さん、はシワシワだから違う。


姉ちゃん、はこんな綺麗な手をしてない。


梓、はもうちょっと黒いはずだ。



他に俺に近い女?


城崎……か…?


でも確か、アイツは男爪が嫌だって話してたことがある。


この手は……女爪だ。



じゃあだれが……


ふと、ひとりの顔が浮かぶ。



“本木沙耶”



俺が忘れてしまった人。


……なんでだろう。


一度本木の顔が浮かんでから、消えない。


アイツの笑顔が頭に焼きついていて離れない。


きっと他に女を思い出そうとしても、もう出てこないだろう。


本気でそう思う。


じゃあ、しかたねーか。


本木に、すべてを託そうじゃねーか。



「……本木沙耶」



頼んだぞ、本木。


心の中で本木に託したと同時に強い力で体が引っ張られた。


なっ、なんだ……!?


もしかして、間違えた……!?


目をギュッと強くつむる。



〈次にお主が目を覚ましたときが、この問題の結果発表じゃ〉



ジジイの声を最後に、俺は意識を失った。