君についた10のウソ

物音ひとつたたない教室。


それと対峙するように、ザワザワと騒がしい廊下。



「……沙耶ちゃん、行きなよ」


「へ……?」


「沙耶、あたしも沙耶が行くべきだと思うよ」


「……俺もそう思う」



桃菜ちゃんが声をあげて、 それにみんなが賛成していく。


思いがけないできごとに、頭がついていけない。


みんなそれぞれ言いたいことを言って、それが静まったとき。



「沙耶ちゃん。ウソを貫き通してもいいし、本当のことを言ってもいい。だから、いってらっしゃい」



微笑んだ透くんに、そう言われた。



「……そうしたらあたしはウソを貫くよ…?それでも、いいの……?」



ここまできてウソをつくなんてバカだと笑われるかもしれない。


今度はクラス全員に責められるかもしれない。


だけど、あたしは今さらあたしが彼女です、なんて言えないの。



「まだウソつく気なの!?いい加減にしなよ!だったら、あたしが………」


「沙耶ちゃん行って!」


「本木!早く行け!」



あたしの言葉に激昂した桃菜ちゃんを透くんと北山くんが抑え込む。



「……ごめん。ありがとう……!」


「あっ、ちょ、離してよ!」



桃菜ちゃんと透くんたちが揉め合う声を背に、あたしは優を探しに走りだした。