君についた10のウソ

「…も、もしもし……」



あぁ…声が震えちゃう……



『…沙耶ちゃん……?』


「……うん」


『…なにかあったの?』



チラリと優を見ると優はあたしを瞬きもせずに見つめていた。


見つめる、というか、監視しているような感じ。


……あたしが、ちゃんと言うかどうか。



「透くん、ちょっと待っててもらえる…?」


『いいよ』



許可をもらってからスマホのマイク部分を手で覆う。



「優、手で耳をおさえてて」


「は?なんで?」


「…ちゃんと言うから、お願い」



ちゃんと言うと言ったあたしを信用して耳をふさぐ優。


これなら、優にあたしが透くんに“好き”と言うのを聞かれなくて済む。


ウソでも聞かれたくなんかない。


好きな人に、他の人に贈った愛の言葉を。


これは小さな、あたしの、ワガママ。



「…お待たせ」


『うん。それでどうしたの?』



深く息を吸って静かに吐く。


嫌だ嫌だと逃げだそうとする心を落ち着かせて。


あたしはゆっくりと口を開いた。